北海道の地名は明治時代に古代の五畿七道にならって命名された
明治になり、江戸時代に蝦夷地(えぞち=現 北海道と周辺島嶼)と呼ばれていた地域を、明治新政府によって開拓することに。
それにともない、蝦夷地に新名称をつけることとなった。
明治2年(1869年)8月、北方探検家で開拓判官(開拓使の役職)だった松浦 武四郎(まつうら たけしろう)が提案した「北加伊道(ほっかいどう)」を、日本政府が古代の五畿七道(ごきしちどう)の東海道・西海道・南海道にならって「北海道」として採用した。
北海道が生まれた経緯
もともと現在の渡島半島をのぞく北海道と樺太(南サハリン)・千島(クリル)は、江戸時代以前、日本(和人)側は「蝦夷地(えぞち)」、アイヌ側は「アイヌモシリ」と呼ばれていた。
明治時代になって、明治新政府によって蝦夷地の開拓が始まり、慶応4年4月に箱館奉行所の場所に蝦夷地を管轄する行政機関として箱館裁判所(はこだて さいばんしょ)を設置。その後、同年閏4月24日に箱館府(はこだてふ)へ改称し、さらに明治2年(1869年)7月14日には箱館県へ再改称。
そして、明治2年7月24かに箱館県に代わり、開拓使(かいたくし)が設置された。
当初は東京に本庁を置き、蝦夷地内の箱館などの数ヶ所に出張所を設けていたが、明治3年閏10月に箱館へ本庁を移転。
さらに明治4年5月には、札幌に本庁を移した。
開拓使の設置にともなって蝦夷地に変わる新名称を考えることとなる。
開拓使の開拓判官という役職に付いていた、伊勢生まれの松浦 武四郎は、蝦夷地の新名称案を提言。
松浦は、北方探検家として何度も蝦夷地を探検し、蝦夷地に関する著書を何冊も書いていたためである。
松浦は、以下の6案を選定した。
- 日高見道
- 北加伊道
- 海北道
- 海島道
- 東北道
- 千島道
明治2年8月15日、この中から政府は、「北加伊道」を選別。
さらに、古代の五畿七道の東海道・西海道・南海道にならい「北海道」に漢字を変更して採用した。
のちに松浦は『蝦夷地道名之儀勘弁申上候書付』のなかで、北加伊道の「加伊」は、アイヌ語でアイヌ人を指す「カイ」という言葉と、蝦夷を「カイ」と呼ぶことができることも、命名理由であると述べている。
なお松浦は、北海道内に新設された国名や郡名も選定した。
以下は、北海道に設定された国(11国)。
- 石狩国(いしかりのくに)
- 胆振国(いぶりのくに)
- 後志国(しりべしのくに)
- 渡島国(おしまのくに)
- 天塩国(てしおのくに)
- 日高国(ひだかのくに)
- 北見国(きたみのくに)
- 十勝国(とかちのくに)
- 釧路国(くしろのくに)
- 根室国(ねむろのくに)
- 千島国(ちしまのくに)
もともと北海道は広域地方名として命名されたもの。
そのため、北海道の中にいくつかの国が制定された。
また、もともと江戸時代に松前藩(館藩)があったが、明治4年(1871年)7月の廃藩置県によって館(たて)県が設置される。
しかし、同年9月に館県は弘前県(のちの青森県)に編入合併。
なお、館県以外の北海道の土地は、東京に置かれた開拓使本庁が管轄したが、明治4年(1871年)5月に札幌に開拓使本庁を移転した。
明治5年(1872年)9月、旧館県域は弘前県から開拓使本庁に移管され、函館に開拓使函館支庁が置かれる。
結果、北海道全域が開拓使の管轄となった。
明治8年(1875年)5月に、ロシアと「樺太・千島交換条約」を締結して、樺太の領有を放棄。
しかし明治38年(1905年)、日露戦争後のポーツマス講和条約で再び南サハリンを樺太として領有。
明治15年(1882年)2月、開拓使は廃止して、代わりに北海道内に函館県・札幌県・根室県の3県が設定される。
しかし、明治19年(1886年)1月に函館・札幌・根室の3県を統合し、あらたに北海道全域を管轄する北海道庁を札幌に置いた。
その後、戦後の昭和22年(1947年)の地方自治法で、ようやく北海道・北海道庁は、ほかの都府県・都府県庁と同じ扱いの地方自治体(地方公共団体)となった。
昭和27年(1952年)4月、サンフランシスコ講和条約で、日本は樺太・千島の領有を放棄。
ちなみに、松浦の開拓使参加は、アイヌ人の生活向上も目的のひとつだった。
しかし、アイヌ人に対する扱いで上官と衝突し、北海道命名の翌年の明治3年に開拓判官を辞任。
その後は、著述家として生活した。
北海道の地名に関する情報
現在の庁舎所在地 | 札幌市 |
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地名命名パターン | その他のパターン |
地名発祥時期 | 明治2年8月15日 |
現都道府県の設置時期 | 名称設定:明治2年(1869年)8月 北海道庁設置:明治19年(1886年)1月 地方公共団体化:昭和22年(1947年)4月 |
明治維新時のおもな管轄 | 松前藩(福山藩・館藩)、幕府直轄領(天領)、蝦夷地(アイヌ人居住地) |
範囲内のおもな旧国 | 蝦夷地(えぞち) 石狩国(いしかりのくに) 胆振国(いぶりのくに) 後志国(しりべしのくに) 渡島国(おしまのくに) 天塩国(てしおのくに) 日高国(ひだかのくに) 北見国(きたみのくに) 十勝国(とかちのくに) 釧路国(くしろのくに) 根室国(ねむろのくに) 千島国(ちしまのくに) |
庁舎所在地の変遷 |
※地方公共団体化して以降の変遷 |
参考資料
- 『日本歴史地名大系』
- 『朝日新聞』2018年(平成30年)7月4日「ことばの広場」
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