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【千葉県】地名由来は県庁のあった郡名と都市名。起源は「台地の端」か「泊」の意味か

千葉県の県名は設置時に置かれた県庁のある都市名と郡名から

千葉県の県名は、県庁が設置された郡名と都市名に由来している。

設置時に千葉郡 千葉町に県庁が置かれたため、郡名・都市名の「千葉」を取って、「千葉県」と命名された。

千葉町は、現在の県庁所在地・千葉市の前身になる。
つまり千葉県は、設置当時からずっと同じ都市に県庁が置かれているのだ。

千葉県が設置されたのは、明治6年(1873年)6月15日

明治維新時から領地の整理がおこなわれ、明治2年の府藩県三治制、明治4年の廃藩置県を経て、県の統合が進んだ。

そして明治6年6月15日、千葉町を含む房総半島北部を中心とする印旛県(いんばけん)と、房総半島の南部を中心とする木更津県(きさらづけん)が対等合併し、千葉県が新設された。

明治8年(1875年)5月7日には、利根川下流両岸一帯を県域とした新治県(にいはりけん)のうち、おおむね利根川以南、つまり新治県内の下総国にあたるエリアを編入合併。
これにより、現在の千葉県の範囲がほぼ確定した。

千葉郡・千葉町は古代にあった千葉郷が起源。中世には千葉庄も

千葉県の由来となった千葉郡と千葉町だが、その起源は古い。

千葉郡は古代からある郡名だ。

いっぽう、千葉町は江戸時代に交通の要衝となり宿場町として繁栄。
佐倉城を拠点とした佐倉領内の重要都市であった。

その千葉町は、古代千葉郡の中にあった「千葉郷(ちばごう)」が前身とされる。

また、千葉郡も千葉郷が郡名発祥地であると推測できる。

つまり千葉の地名の起源は、千葉郷にあるといえるのだ。

千葉郷は、現在の千葉市中心部あたりが比定地だ。

なお、平安時代前期に編纂された全国の国・郡・郷を記載した『和名類聚抄(わみょう るいじゅしょう:和名抄)』に、千葉郡・千葉郷は載っている。

また、千葉郷だったエリアを中心とした一帯には、中世に「千葉庄(ちばしょう、千葉荘)」という、下総国最大規模の荘園があった。

千葉郷の由来は「台地・崖地の端」説と「泊」説がある

千葉県の元となった千葉郡・千葉県の起源、千葉郷の地名由来はなんだろうか。

『古代地名語源辞典』を参考にすると、地形に由来しているのが有力だ。
古い地名は地形由来のものが多いが、千葉郷も同じ。

ただし、地形由来は2説ある。

  • 「ツバ=台地や崖地の端」説
  • 「トバ=泊(とまり=港)」説

順に紹介したい。

「ツバ=台地や崖地の端」説

まず「ツバ」説。

『古代地名語源辞典』では、「チバ」は「ツバ」が変化したものとする説で、「ツバ」は古い言葉で「端」という意味。
また、「つばえる(崩える)」という古い動詞の「つば」でもあるとのこと。
「つばえる」とは「崩れる」を意味し、「ツバ」は崩壊地形を意味している。

つまり「千葉」は、台地の端や崖地の端、その周辺一帯に発達した集落だから生まれた地名だということだ。

たしかに、千葉市中心部は東西に台地・高台が細長く続いており、地形とも合致する。

「トバ=泊(とまり=港)」説

つづいて、もうひとつの「トバ」説を見ていきたい。

トバは三重県の鳥羽市をはじめ、各地にある地名だ。

トバも千葉同様にツバ説もあるようだが、「泊まり場」が変化したものという説も有力。
トバ地名が海に面した地域にあれば、「泊まり場」の意味だろう。

千葉郷の場合、海に面しており「泊まり場」の可能性は大いに考えられる。

泊まり場とは「泊(とまり)」とも呼ばれ、古代において船が長い航路を航行する際、風待ちや潮待ちのために船を停泊させるための港のことだ。

「台地・崖地の端」「泊」どちらも考えられる

千葉の地名は、泊に由来することも十分考えられる。

ツバ説・トバ説とも双方可能性が高く、どちらかは判断するのは難しいだろう。

なお、2つの地形説のほかにもいくつか説があるようだ。

しかし『古代地名語源辞典』によれば、いずれも漢字が当て字であることを考慮せず、漢字の意味から生じた説話・伝説を元にしたものとのこと。
さらに、アイヌ語説などもあるようだが、これも信憑性がない。

千葉県の地名に関する情報

現在の庁舎所在地 千葉市
地名命名パターン 郡名・都市名由来
地名発祥時期 不明 (古代にはすでに存在)
現都道府県の設置時期 明治6年(1873年)6月15日
明治維新時のおもな管轄 【現千葉県域内に拠点があった領地】
下総 佐倉藩
下総 関宿(せきじゅく)藩
下総 高岡藩
下総 生実(おゆみ)藩
下総 小見川(おみがわ)藩
下総 多胡(たこ)藩
上総 鶴牧藩
上総 請西(じょうざい)藩(桜井藩)
上総 一宮藩
上総 大多喜藩
上総 久留里藩
上総 飯野藩
上総 佐貫藩
安房 勝山藩(加知山藩)
安房 館山藩
安房 船形藩
旗本知行所
千葉神社朱印地・来迎寺朱印地・大日寺朱印地・千葉寺朱印地などの寺社朱印地

【現千葉県域外に拠点のあった藩】
下総 古河藩
ほかの藩

旧 江戸幕府直轄地 (武蔵 江戸代官支配所)
範囲内のおもな旧国 上総国(かずさのくに)、下総国(しもうさのくに)、安房国(あわのくに)
庁舎所在地の変遷
千葉郡 千葉町 (現 千葉市)
明治6年(1873年)6月15日〜

参考資料

  • 『日本歴史地名体系』(平凡社)
  • 『古代地名語源辞典』楠原 佑介ほか (東京堂出版)
  • デジタル標高地形図「関東」|国土交通省 国土地理院