長野県の県名は県庁の置かれた都市名から
長野県の県名は、県庁が置かれた都市名に由来している。
現在、長野県の県庁所在地は長野市。
長野市の前身である、水内郡(みのちぐん)長野村に県庁が置かれたため長野県と命名された。
ちなみに長野村は、明治7年(1874年)11月に長野町に、明治30年(1897年)4月に市制施行して長野市になっている。
長野県の変遷:長野県は元は中野県だった
明治維新後、明治元年8月(1868年)に信濃国内にあった旧 江戸幕府直轄地の飯島・御影(みかげ)・中野・中之条の各代官支配地に、信濃国内の旗本領や寺社領などがまとめられ、伊那郡 飯島村に県庁を置く伊那県(いなけん)が成立する。
明治3年月17日(1870年)9に中野分局の管轄域(旧 中野代官支配地)が分割され、高井郡(たかいぐん) 中野町に県庁を置いた中野県が発足。
明治4年2月29日(1871年)、旧 善光寺領の地域が伊那県から中野県へ移管され、3月に中野県の出張所が旧 善光寺領域の水内郡 長野村に置かれた。
しかし同年12月に「中野騒動」が勃発し、中野県庁が焼打ちに遭ってしまう。
そのため、中野県発足後約10か月めとなる明治4年6月、県庁が水内郡 長野村(現 長野市)の西方寺に移転、県名も長野県(第一次)と改称した。
明治4年7月になると廃藩置県が実施されて、新制度下における新たな長野県(第二次)が新設される。
廃藩置県により、信濃国内に長野県を含め14県が設置された。
しかし同年11月20日にはやくも再編がおこなわれ、信濃国北部の飯山・松代・須坂・上田・小諸・岩村田・椎谷の各県が長野県に編入合併。
また、信濃国中・南部の伊那・松本・高島・高遠・飯田・高山の各県と名古屋県の一部(信濃国分)が統合されて、筑摩郡(ちくまぐん)松本町に県庁を置く筑摩県(ちくまけん)が新設された。
しかし筑摩県庁が焼失したのを機に、明治9年(1876年)6月に筑摩県は飛騨国分(旧 高山県域)と信濃国分に分割、飛騨は岐阜県に、信濃は長野県にそれぞれ移管される。
これによって、現在の長野県域がおおむね確定した。
この年行われた廃藩置県によって信濃には一四の県が生れたが、同年一一月全国が三府七二県に統合された時、信濃東北部の六県をまとめて長野県とし、中南部の四郡と飛騨国とによって筑摩県が成立した。そして明治九年六月筑摩県庁が焼失したのを機に飛騨国を岐阜県に分ち、筑摩県は長野県に合併されることになった。これが現在の長野県である。
長野県と筑摩県の対立が長く続いた
長野県の旧筑摩県側からは、何度も長野県からの分県騒動が何度も起きており、昭和20年代まで続いた。
なかでも明治22年(1889年)と昭和23年(1948年)の分県騒動は大きく、明治22年の騒動では筑摩県出身の県会議員らの建白書により、元老院で旧筑摩県域の分県が可決されている。
しかし旧長野県派の県会議員らの反対が激しく、内務省が許可しなかったために実現しなかった。
昭和23年には長野県庁が火災にあったことがきっかけで、分県騒動が再燃。
しかし、分県は成立しなかった。
長野の地名由来
長野村には古くから善光寺があり、村は善光寺の領地だった。
善光寺周辺には門前町が栄え、善光寺町と呼ばれるように。
江戸時代においても、長野村は善光寺が領有する善光寺領であった。
そんな長野村の文献上の初見は、江戸時代初頭。
慶長6年(1601年)9月16日の「大久保長安等連署証文(善光寺文書)」である。
「善光寺御寺領之割」に「一弐百五拾石 信州水内郡之内長野」とある。
実際は文献上の初見よりも、ある程度古い時代には長野村は存在していると思われる。
長野村の中枢である善光寺周辺含む一帯は、長野市街地のある平野部よりやや小高い台地・緩傾斜地になっている。
「長野」とはこの地形を表したものだろう。
『古代地名語源辞典』では、古代にも長野の地名がある(現 大阪府河内長野市の由来となる河内国 長野郷など)。
古代では、長野は「広く緩やかな傾斜地」を表しているという(「長」は雅称の場合もある)。
長野市の前身の長野村の「長野」は初見が江戸時代のため、古代まで由来さかのぼらない可能性が高いが、前述のとおり長野村の地形は緩傾斜地であることから「広く緩やかな傾斜地」という条件は合致している。
もしかしたら、中世ごろでも緩傾斜地を「長野」と呼んでいたのかもしれない。
長野県の地名に関する情報
現在の庁舎所在地 | 長野市 |
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地名命名パターン | 都市名由来 |
地名発祥時期 | 不明(初見は江戸時代初頭) |
現都道府県の設置時期 | 明治4年7月(1871年) |
明治維新時のおもな管轄 | 【現長野県域内に拠点があった領地】 信濃 松本藩 江戸幕府直轄地(飯島・御影・中野・中之条の各代官支配地) 善光寺領 など |
範囲内のおもな旧国 | 信濃国(しなののくに) |
庁舎所在地の変遷 |
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参考資料
- 『日本歴史地名体系』(平凡社)
- 『古代地名語源辞典』楠原 佑介ほか(東京堂出版)
- 『大日本地名辞書』吉田東伍(冨山房)