もくじ
茨城県の地名由来は県庁所在郡名から
茨城県の県名は、県設置当時の県庁があった茨城郡 上町(うわまち)の郡名から取られている。
上町は水戸城の城下町。
水戸城下は上町と下町に分かれていて、上町・下町を合わせた通称として水戸と呼ばれていた。
水戸城は水戸藩の拠点で、水戸城下は現在の水戸市中心部である。
茨城県が誕生したのは、明治4年11月13日。
廃藩置県からわずか4ヶ月ほどのことである。
明治4年7月の廃藩置県により、現 茨城県域には15の県が設置された。
- 松岡県
- 水戸県
- 宍戸県(ししどけん)
- 笠間県
- 下館県
- 下妻県
- 松川県
- 石岡県
- 志筑県(しづくけん)
- 土浦県
- 麻生県(あそうけん)
- 牛久県(うしくけん)
- 龍ヶ崎県(りゅうがさきけん)
- 結城県(ゆうきけん)
- 古河県(こがけん)
これら15県が11月13日に統合された。
松岡・水戸・宍戸・笠間・下館・下妻の6県と若森県の一部が合併し、茨城県が新設され、県庁が茨城郡上町(旧 水戸県内)に置かれる。
ほかは、新治県(にいはりけん)が設置されたほか、現 茨城県域の一部では印旛県(いんばけん)や木更津県(きさらづけん)の管轄下に置かれた地域もあった。
その後、明治8年(1875年)5月7日に再統合が実施されて、ほぼ現在の茨城県の県域となった。
茨城郡は古代からある名称で、郡内にあった茨城郷に由来
茨城県の県名が茨城郡に由来していると紹介したが、茨城郡の名の由来が気になるところだろう。
茨城郡は古代から存在し、茨城郡内にあった「茨城郷(いばらぎごう)」という郷の名称に由来している。
つまり、茨城郷に郡の中心があったから茨城郡になったと推定できる。
古くは茨城は茨城とも茨木などとも書かれ、読みは「うはらき」「むはらき」などとも読まれた。
「は」は「ば」「ま」とも、「き」は「ぎ」とも発音されたようだ。
平安時代前期に全国の国・郡・郷を記載した『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう:和名抄)』では、「むはらき(牟波良岐)」と訓がある。
また「茨城」「茨木」の漢字は当て字で、漢字の意味は無視する必要がある。
『古代地名語源辞典』では元は「うはらき(うばらき)」だったという。
最後の文字「き」は土地や場所を表す古い接尾語。
「うは(うば)」は「奪う」の元になった古語で、崖崩れを意味するという。
または「あは(あば)」の変化とし、「あば」は「暴く」の元になった古語で、こちらも崖崩れを意味するそうだ。
また、「うは」は「上(うは)」で高いところを意味する言葉でもあるとのこと。
つまり、ウハキ → ウハァキ → ウハラキ → ムハラキ → イバラキ と変化したもので、ウハが「上」の意味なら「高台」、ウハが「崖崩れ」を意味するなら「崩落地」を表した地名である。
古代の茨城郷は現在の石岡市中心部から南部
古代の茨城郡 茨城郷は、現在の石岡市の中心部からその南側一帯にあたるといわれている。
実際に、茨城(ばらき)という地名も残っている。
また、近くには古代常陸国の中心である国府(府中)があり、総社や国分寺も存在し、古墳も多く、かなり古い時代から常陸国や茨城郡の中枢エリアだった。
このあたりは霞ヶ浦の北岸にあたり、石岡台地という底丘陵地が続く地域である。
まさに「高台」という意味の地名に合致する地形だ。
さらに、この台地は大昔に崩落によって生まれた地形の可能性がある。
そう考えると「崩落地」という意味の地名も合致するだろう。
なお、茨城県は台地・底丘陵地が多い地域であり、常陸という国名もそのような地形に由来する説もある。
ちなみに、茨城の地名由来には「茨(いばら)に囲った城」「茨の柵」に由来するという説もある。
『古代地名語源辞典』では、漢字の意味にちなんだ説話に過ぎず、根拠がないとのことだ。
茨城郡は安土桃山時代に範囲が大きく変化した
実は、茨城郡は近現代と古代とで大きく範囲が変化している。
変化したのは、安土桃山時代。
豊臣秀吉が実施した太閤検地により、郡域を変えられたのだ。
茨城県は、県庁が茨城郡 上町(水戸城下)に置かれたため茨城県となったわけだが、その水戸城下は太閤検地以前は、那賀郡(なかぐん)だったのだ。
茨城郡の由来となった茨城郷は、太閤検地後の郡域変更によって新治郡(にいはりぐん)に属することとなってしまった。
もし安土桃山時代に郡域変更をしていなかったら、茨城県ではなく那珂県だったかもしれない?
茨城県の地名に関する情報
現在の庁舎所在地 | 水戸市 |
---|---|
地名命名パターン | 郡名由来 |
地名発祥時期 | 不明 (古代にはすでに存在) |
現都道府県の設置時期 | 明治4年11月13日 |
明治維新時のおもな管轄 | 水戸藩など |
範囲内のおもな旧国 | 常陸国(ひたちのくに)、下総国(しもうさのくに)の一部 |
庁舎所在地の変遷 |
|
参考資料
- 『日本歴史地名体系』(平凡社)
- 『古代地名語源辞典』楠原 佑介ほか (東京堂出版)
- デジタル標高地形図「関東」|国土交通省 国土地理院